キヤノン・コンポーネンツ株式会社 プリント配線板事業


インクカートリッジなどに使用されるTABフレキ基板の製造では、抜き取り検査ができない工程特性から、目視検査への依存やリール状に巻かれた長尺製品の再確認など、多くの負担が発生していました。
本記事では、既存ラインの制約を踏まえながら工程内検査を再構築し、品質安定化と作業負担軽減を同時に実現した取り組みをご紹介します。



TAB(※注1)フレキ基板は、インクカートリッジなどに用いられる薄型のフィルム状電子部品で、連続生産方式で製造されています。
この方式では途中で抜き取り検査ができず、最終工程で不良が見つかると、相当な長さの基板全体を巻き戻して確認する必要があり、現場の大きな負担となっていました。
長尺の基板を扱う現場では、最終チェックを担う目視検査の負荷が高く、担当者には、「高速で流れる基板を隅々まで見続ける集中力」と、「見続けた中から微細な異常を判断する力」が求められていました。これは熟練者であっても負担が大きく、見逃しのリスクがゼロにはなりません。
(※注1)TAB… Tape Automated Bondingの略



業務面では、異物の見逃しによって、追加検査や突発的な作業が必要になります。
特に目視検査員の負担が大きく、現場では見逃し防止に努力していますが、人の力に頼る部分が多く、限界を感じていました。また、長尺リールをすべて引き出して再確認する作業が発生し、非常に手間がかかりました。
品質面では、目視検査には限界があるため、工程内検出や検査基準の標準化など、根本的な改善が急務だと考えていました。また、異物流出によるクレームが顧客の信頼を損ねるリスクとなり深刻です。
今回の導入にあたり、実は当初、別の目的でカメラ導入検討を開始したのです。それは、ある微小部の外観を管理(交差外を検出)する用途でした。しかし、IRC350N-8Kの光学解像度(600dpi相当、約42μm)では検出には不十分であることが判明し、その用途は一旦白紙となりました。しかし、現場の気づきにより、別用途での利用に方針を転換しました。
それが、異物付着監視用途です。現場が抱えていた根本的な課題の一つは、"異物や微小欠陥を「最終工程でしか発見できない」構造にある"、という点でした。もし異物付着が発生した瞬間、あるいはその直後の段階で検知できれば、後工程への流出を防ぎ、手戻り作業や突発対応を大幅に削減できると気づいたのです。
また、この考え方はDX推進や品質の標準化といった社内の活動方針とも一致しており、「工程内で異常を早期に捉える仕組みの導入」が改善テーマとして明確になりました。
こうして、インラインで異物付着をモニタリングする用途へと切り替えたのです。

既存ラインにはスペースや搬送条件など多くの制約があり、新しい検査装置を大規模に導入することは容易ではありませんでした。そこで現場に求められたのは、
という、"ライン条件に適した検査方式"でした。


複数の方式を比較した結果、最も適合したのは、後付けが容易な小型ラインスキャン方式でした。とくに評価されたのは以下の点です。
これらが決め手となり、IRC350N-8Kを選定しました。
TABフレキ基板の表面用・裏面用に1台ずつ、計2台を配置することで、工程内で両面を常時監視できる体制が確立されました。運用開始後は、撮像データをもとに異物やキズをモニタリングし、一定量以上の異常を検知するとAI(※注2)が異常検出回数をもとにNG判定し、アラートを表示する仕組みが構築されました。
結果として以下の効果が得られました。
従来は最終工程まで流れてしまうこともあった異物を、"工程内で早い段階に把握できるようになった点"が大きな変化です。導入による改善は工程内検査の高度化にとどまらず、品質保証と生産性の双方を底上げする結果につながりました。
(※注2)AIソフトは同梱されていません。



今回、2台の設置作業(※注3)に要した期間は2日間。作業開始の翌日には新しい検査システムがスムーズに立ち上がりました。
現場からは、「判断基準が数値化され、誰でも同じ判断がしやすくなった」「長尺リールを全て引き出して確認する作業が大幅に減った」といった声が寄せられました。
既存ラインへの後付けが可能だったことに加え、技術開発部門の充実したサポートや、レスポンスの早さについても良かったと評価。使いやすさ・扱いやすさも良好とのことです。
(※注3)既存装置内への専用アタッチメント取り付け、撮像条件に合っているかの確認、確認流動などの一連の作業を含む
年内に別ラインへの拡張も予定しています。検査効率が更に向上する見込みです。
さらに、今回IRC350N-8Kの解像度では実現できなかった42μm以下の外観不具合検出や、カメラ+ソフトウェアのオールインワン型検査システムへの進化にも期待が寄せられています。「異物監視だけでなく、微小な外観不具合検出も可能になれば、品質保証のレベルはさらに上がる」との貴重なご意見をいただきました。

「私たちはTAB基板分野で実績を有するメーカーの一つとして、他事業で培ったIRC(コンパクトタイプ・ラインスキャンカメラ)技術との連携も進め、検査体制を進化させていきます。
また、お客様、ステークホルダーの皆様、そして未来の仲間となる方々に、私たちプリント配線板事業の挑戦と誇りをぜひ知っていただきたいと思っています。今後も高精度な検査と安定した品質で、安心と信頼をお届けし続けます。」プリント配線板事業の生産技術課長はそう締めくくってくださいました。
―これから導入をご検討中の方に対して、何かアドバイスやメッセージがあればお聞かせください。
「IRC350N-8Kの導入を検討されている方には、まず「何を検査したいのか」をはっきりさせておくことをおすすめします。
それから、設置条件を事前に確認しておくこともポイントです。スペースや既存装置との組み合わせが問題ないかを早めにチェックしておくと、設置がスムーズになります。実際、設置自体は非常に簡単で、作業開始の翌日には完了しました。
さらに、検討期間の目安をあらかじめ社内で共有しておくことも大切です。導入前に"何を検査したいのか"、"設置条件は問題ないか"、"どれくらいの期間で導入したいのか"を整理しておくことで、関係部署との認識合わせがしやすくなり、導入までのプロセスをよりスムーズに進めることができます。」

| 事業内容 | 開発・生産・販売会社 (コンタクトイメージセンサー、プリント配線板、インクジェットカートリッジ、医療機器) |
|---|---|
| 所在地 | 〒369-0393 埼玉県児玉郡上里町大字七本木3461番地1 |
| 従業員数 | 1,059名(2026年4月現在) |
日本語
English